EELC2010

先週末からprogramme chairをやっている学会でprogramme committeeに入ってもらう依頼のメールを色んな人に90ほど送り,返事に対応するという割とこまめな仕事をしていた.面識がない人に頼みごとをするのは割と気を使うのだが,イギリス時代の知り合いなんかにもコンタクトが取れて結構楽しい一面もある.一応それが一段落し,3月10−12日の3日間に渡って,キャンパスプラザ京都で言語進化のセミナーJAIST-EELC2010があったので参加してきた.

Tecumseh Fitchの音声・統語に関して,系統発生的視点,および同種の特性の異なる進化系統間の比較から得られる知見を分かりやすく丁寧にまとめた発表は,実に分かりやすく有益であった.Cedric Boeckxは,個人的な偏見と無知でもっとゴリゴリのミニマリストな論を展開するのかと思っていたのだが,言語学者が分野横断的な言語進化の研究をする際のポイントを的確に論じていて,共感する点が多かった.Cedricは30代にして10冊の本と100本の論文を発表していると紹介されていたが,いやはやすごい人もいるものである.
私自身は言語進化に関しては,PhDを取って以降興味があってフォローは一応してきているが,言語学者としてどう関わるかに明確な態度を示すことができないので,積極的な研究というのはしていない.これまでやってきた「言語理論」を全面に押し出した論を展開してもあまり意味がないし,かといってひじょうにgenericな形での主張をしても言語学専門の研究者としての意義のある貢献になるのかと自問してしまう.この辺のバランスがひじょうに難しく感じる.レキシコン関係でモデルを構築していけば,今やっている形態論の研究とも接点が持てる気がするが,基本的に実験系ではなく理論系の方が好きなので,悩ましいところである.

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