神経科学リテラシー

今日は東大駒場で「神経科学リテラシー」というシンポジウムに出席してきた.新型インフルエンザの影響でどうなるかな,と思っていたが,何事もなく開催されて良かった.朝10時から夕方6時前までと,中々の長丁場だったが,興味深い話が多く,楽しめるシンポであった.

ここ数年,メディアにやたら登場して何でも脳に絡めて与太話をする脳芸能人がいたり,脳を鍛えるとかいう触れ込みのゲームやら本やら訳の分からないものが巷に溢れていたりして,ひじょうに気味が悪い.気味が悪いくらいで済めばいいが,この手の偽科学が広まるのはかなり危険である(子供に見せたくない番組というのを毎年PTAが発表しているが,そこに登場する常連番組より,脳に関する偽科学を扱った番組の方が,教育上遙かに危険だ).
そういう危険を察知してか,東大駒場の科学哲学の人たちが脳科学,神経科学の専門家(脳芸能人ではなく本物の)と,神経科学のリテラシーを高めるという目的で立ち上げたプロジェクトが今回のシンポの主催者の方々である.教科書を執筆し,学部教養課程の学生向けへ導入した試みを初め,脳科学・神経科学と社会との関わり,脳疾患と精神疾患,法体系の再整備,人間観の変化などについての議論も多くあり,想像以上に根深い問題がありそうだという印象を持った.
私自身,法学部に身を置く認知科学者であるので,リーガルマインドと科学リテラシー,神経科学リテラシーとの関わりというのを考えてみる良いきっかけを与えていただいた.普段教えている感触からすると,法学専攻であっても早稲田の学生はそれほど自然科学にアレルギーがないようなので,もう少し社会・法との関わりを感じられるように,脳・認知に関わる諸問題を提示できる方法を模索してみようと思う.

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