科学理論の価値

あれよこれよとしている間に,もう9月である.後期が始まるまではまだ1ヶ月ほどあるが,9月に入ると会議も増え,講義準備もちゃんとしないといけないので,そわそわしてくる(と言いつつ,毎月1日感謝デーの新宿バルトで映画を見てきたが).
何より秋は科研費の申請について考えないといけない.科研費は大学教員になった2006年に初めて申請して,幸い採択されて研究費をいただいた.それが切れた後,昨年は翌春大学を移ることが分かっていたので申請を見送ったのだが,今年は書類作成の時間を確保して申請したいところである.学振が政権交代で今後どういう影響を受けるのか不明だが,首相になる人が元大学教員で経営工学の研究者なので,悪いようにして欲しくないなぁ(あの人は学者のままでいた方が幸せになれたのではないかと思わないでもない).
先日イヌの進化の話を書いたが,今月のScientific Americanは1冊丸々進化論の特集である.今年はダーウィン生誕200周年,『種の起源』出版150周年ということで,1月号も進化論の特集だったが,今回はOrigins of the Universe, Life, the Mind, Computingを中心として,様々な起源の話が載っている(ポッドキャストのmp3はココ).英語が苦手な人は4ヶ月後には翻訳版の『日経サイエンス』が出るはずので,そちらをご覧になるとよいだろう.

Origins of the Mindといえば,進化心理学(evolutionary psychology)はPinkerあたりの大物でもハードサイエンスの人々にspeculativeだとかpost-hocだとかケチョンケチョンにけなされることが多いけど,同じくScientific AmericanのポッドキャストでLisa DeBruineの進化心理学の真価についての論考が紹介されていた(mp3はココ).彼女の主張は,進化論的視点の真価は,既知の行動に進化論的理由を与えることではなくて,まだ深く研究されていない行動に対して新たな予測を提示することだ,ということ.科学理論における予測可能性の重要さって,今更強調しなくても当たり前のことだと思うんだけど,巷に出てくる目を惹く研究ではこの視点が案外欠けてるのも多いのかもしれないな.言語進化論もこの予測可能性をいかに提示できるか,というのが今後の発展の鍵だろう.


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