ろくにブログを更新しないまま,もう2月も半ばを過ぎてしまった.大学も入試シーズンに入り,私の所属する学部の入試も終了した.約1ヶ月間学生の立ち入りが禁止され,教員も限られた門から職員証を見せて出入りしなければならない.結構面倒である.今あるセコムのセキュリティカードで認証してキャンパスも建物も入れるようにしたら良いと思うのだが,やはり大学全体の規模でやるにはコストの問題があるのだろうか,それともセキュリティが甘くなるのだろうか.あるいは『ガタカ』みたいにするとか.
先日,今年1年間教えた1年生の学生から,この夏に東京でアジア諸国の法学生とともに様々な問題を議論する会合を開くための助成に応募するから推薦状を書いて欲しいと(とても丁寧に)お願いされた.100人以上の参加者で1週間ほど開くというから結構な規模である.趣旨もとても共感できたし,企画もよく練られていた.とても優秀なのはもちろん教えていて分かっていたけれど1年生にして実行委員長をしているその学生の活動力に素直に感心してしまった.私の推薦状がどれほどの効果があるか分からないが,無事助成をいただいて,企画を成功させて欲しいと思う(私も覗いてみたいくらいである).
そんな学生の姿を見て,ふと自分の院生時代を思い出した.2002年にマンチェスターのUMISTで開催されたイギリス言語学会で生まれて初めての学会発表をした際に,ヨーク大学の院生だったAlexandara Galaniと知り合いになり(形態論をやっている学生はほとんどいないので,すぐ知り合いになる),翌年ケンブリッジのPostgraduate Conferenceで再会したときに一緒に形態論のワークショップを定期的に開こうと意気投合してYork-Essex Morphology Meetingというのを立ち上げた(ウェブサイトは私が個人的にエセックス大学のアカウントで作っていたのでもう消えていると思ったら,お願いしなくても言語学科が引き続き管理してくれていた.ちょっと感動).イギリス言語学会に資金援助をお願いし,ありったけの人脈を使ってイギリスやヨーロッパの研究者に参加をお願いし,知り合いの大学院生にも「ちょっとでも形態論に関係あればいいから」と発表を勧めた(こうでもしないと形態論は発表者が集まらない).もちろん会場の手配,ティーブレイクの飲み物やお菓子の買出しから,会合後の懇親会の場所探し,学生用の安価なB&Bのリスト作成まで全部Alexと日々電話で相談しながら2人でやった.
今思えば無謀なことをしたものだと思うが,なんとか自分たちの専門分野を活性化したいという大学院生2人に多くの人が惜しみない援助をしてくれたのがなにより心強く,ゼロからの立ち上げということで学問以外の面でも学ぶことが多かった.世界的に見れば,長い歴史を持つアメリカのCLSやBLSも院生が立ち上げたもので,今だって院生によって運営されているし,ヨーロッパのConSOLEもそうである.イギリス国内にもPostgraduate Conferenceは複数ある.
あまり偉そうに発破をかけたくないのだが,日本もちょっとくらいそういう学生主体の全国的な学会があってもいいんじゃないだろうか.日本英語学会にStudents’ Workshopというのがあるが,ああいう既存の学会に乗っかって3つか4つのワークショップをやっても盛り上がらないだろう.それよりも自主的に企画運営する学生独自のワークショップを援助してあげた方が彼らのためになるのではないかと思う.大学院生の皆さんも,こんな狭い国だし電子的に簡単に連絡が取り合えるのだから,連携して学会なりワークショップなりを立ち上げてみてはいかがだろうか.欧米でPhDを取ってきた研究者が多い今なら結構サポートもしてもらえると思うのだけど… 法学の学部生にできて,言語学の大学院生にできないはずないよね(というのはいじわるな言い方か).